2 バス事業の民営化及びスキーム

(1) これまでの経過
  バス事業の民営化について、市民・利用者に必要不可欠なバスサービスを、将来に亘り持続的・安定的に提供するとともに、より良いサービスとしていく手法は何かといった検討を重ね、市民・利用者のお声もお聞きしながら、また、議会での議論を踏まえ、民営化の必要性を提起してきた。
  • 平成24年12月に策定した、「バス事業民営化基本方針(素案)」と平成25年2月に策定した、「バス事業民営化基本方針(案)」の基本的な考え方
    • 競争性を確保しながら持続的なコストダウンとサービス向上を図るため、運営主体をプロポーザル方式の公募により、より優れた民間バス事業者を選定し譲渡する。
  • 平成25年5月に策定した、「バス事業民営化基本プラン(案)」の基本的な考え方
    • 運営主体をプロポーザル方式の公募により、より優れた民間バス事業者を選定する一方、市民・利用者のバスサービス維持に対する不安を払しょくするため大阪運輸振興株式会社に一定の規模を譲渡する。
  • 平成25年9月に策定した、「バス事業民営化・譲渡の考え方について(大阪運輸振興株式会社への譲渡規模の範囲)」の基本的な考え方
    • 大阪運輸振興株式会社が不測の事態に備える役割を果たせるよう、最も安定的な経営基盤を確保することを重視しながら、一定の競争性が確保できるよう守口、中津、鶴町の3営業所を随意で譲渡する。
【主な議会議論(平成25年3月~平成26年5月)】
  • 一括譲渡
    • バスは市民の足である。地下鉄と別になるのではなく、グループ会社・子会社化してしっかり守るべき。
    • グループ経営する中で利益の最大化と路線の維持に対する責任をとってもらうべき。
    • 交通政策の共有や市民の安心の担保、職員の雇用問題などから一括譲渡すべきと指摘してきた。
    • なし崩し的に一括譲渡といった、競争性の発揮がなされないような手法はとるべきではない。
  • 段階的譲渡
    • オールリセットして民間譲渡するのではなく、例えば平成26年度に大阪運輸振興株式会社及び南海バス株式会社にそのまま譲渡すれば良いのではないか。残りは民間委託し、委託後1年間の状況を見て譲渡し、段階的に民営化を図るという安全策をとればどうか。

【対応】

 平成26年9月に議論の深度化を図るべく、大阪シティバス株式会社への一括譲渡、民間事業者への段階的譲渡について、さらなる論点整理や課題に対する考え方を盛り込んだ「議会において提起されたバス事業の民営化手法に関する検討について」をとりまとめた。
 その後、平成26年9月~10月の、交通水道委員会や平成25年度公営・準公営企業会計決算特別委員会において集中的に議論がなされた。



(2)  「議会において提起されたバス事業の民営化手法に関する検討について」をもとにした議会の検討
【検討資料の概要(課題の解決に向けた考え方)】
  • 一括譲渡
     大阪シティバス株式会社への一括譲渡は、「競争性の発揮」によるサービス改善やコスト削減、交通インフラの活性化にリスクがあることから、次善の策として、すでに市場で「競争性」を発揮している民間事業者から、経営陣だけでなく「資本注入」という具体的な形で最大限経営に参画してもらい、結果として「競争性の発揮」に比肩するサービス改善やコスト削減を実現し活性化を図る。
  • 段階的譲渡
     職員の段階的な転籍や財政効果の遅延といった課題があることから、現在大阪シティバス株式会社に委託している営業所をそのまま譲渡し、二段階目に民間事業者への公募譲渡などを行うことで、職員は二段階目で一斉に転籍することとなるほか、二段階目も早急に進めることで早期の財政効果の発揮が期待できる。
 【平成26年9月~10月の、交通水道委員会、平成25年度公営・準公営企業会計決算特別委員会、第3回定例会一般質問における主な意見】
  • 一括譲渡
    • 民間事業者の出資率は33パーセント以上にして、特別決議を単独で阻止できる状態が必要。
    • 大阪シティバス株式会社は、民間バス事業者並みの運行コストの水準を実現しており、外部資本の注入によって経営ノウハウをさらに取得するなら、市バスの後継事業者になることは現実的なスキームといえる。
    • サービス維持に対する不安への担保をいかにとるかという視点で、バスと地下鉄の一体的な経営グループ経営を目指すべき。
    • 市民の足を確保し、市民サービスに供するという視点で資本を導入することが重要である。大阪シティバス株式会社が民間バス会社に限りなく近く、経営体力を備えた会社に早くなってほしい。
    • 大阪シティバス株式会社への一括譲渡は外部資本の注入という考え方で現実的な議論に十分なり得る。
    • 大阪シティバス株式会社への一括譲渡を一貫して主張してきた。交通局や市長もその考えを示している。我々も今まで以上に前向きに検討させていただきたいと考える。
    • 民営化の実現に向けて、大阪シティバス株式会社の確実な経営改革の実行と、民間事業者からの資本注入入や経営陣の参画を図りつつ一括譲渡し、地下鉄が親会社として一体で経営していくスキームについて、会派のコンセンサスを得つつ進めている。
  • 段階的譲渡
    • 転籍条件の違いなどにより、労働条件の調整などに時間を要することや、給与水準、労働条件に格差が生じるといった課題がある。
 【まとめ】
  • 一括譲渡に関する民間事業者からの資本注入や、大阪シティバス株式会社の経営改革の進捗状況などの議論が中心に行われた。
  • 段階的譲渡は、職員の転籍条件などの調整すべき課題が多い。



(3) 民営化のスキームについて
  • バス事業の民営化スキームについては、平成25年2月に「大阪市自動車運送事業の廃止に関する条例案」の上程後も、民営化基本プラン(案)を基に時間をかけて様々な議論・検討を行ってきた。
  • その中で、「バスサービスの維持に対する安心の担保」や「地下鉄と一体的な経営」の観点から大阪シティバス株式会社への一括譲渡に対するご意見がなされていた。
  • 大阪シティバス株式会社は、平成25年9月策定の経営改革計画の着実な取組みにより経営能力は一変しており、既に民間事業者並みのコスト構造を実現している。
  • また、民間事業者から社外や常勤の取締役を招へいし、経営体制を強化している。
  • 今後、さらに経営改革が進むことで、一層の経営基盤の強化が期待できる。
  • 平成26年9月~10月の、「交通水道委員会」や「平成25年度公営・準公営企業会計決算特別委員会」での議会議論では、民間事業者からの経営陣の参画や資本注入が前提ではあるが、大阪シティバス株式会社への一括譲渡を評価する意見が多くなされた。

【まとめ】

以上の議会での議論を踏まえるとともに、
  • 市民・利用者のバスサービスの維持に対する安心の担保
  • 地下鉄とのネットワークの一体性や連携
  • 職員の転籍条件などの雇用の対応
という3つの観点から、民間からの経営陣の参画、資本注入を行い、より民間事業者に近づけていくという前提で大阪シティバス株式会社へ一括譲渡する。
 なお、民営化の基本方針や路線・サービスの維持方策については、平成25年5月に策定した民営化基本プラン(案)の考え方に基づくものとする。



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