4 大阪シティバス株式会社へ一括譲渡する場合の資産・資本のあり方について

(1) 資産形成の基本的な考え方
  • 平成25年5月策定の民営化基本プラン(案)では、バス営業所等の土地・建物は当面貸付、また、バス車両は貸付または有償譲渡としていた。したがって、事業譲渡にあたり必ずしも新たに資産を取得することを条件とはしていない。
  • 当初から大きな資本金を設定することは、配当政策や資本政策上課題がある。また、現時点では潤沢な資金を有していないため、当初は民営化基本プラン(案)どおり貸付からスタートし、内部留保を集積して自己資本に切り替えていく。
  • 譲渡当初は、土地・建物やバス車両といった資産は取得せず、市から借り受けるため、資産取得にかかる費用は必要ないが、事業開始当初に必要な運転資金の確保が必要な際には、金融機関からの借り入れ等により資金調達する。
    • 平成26年3月31日現在の大阪シティバス株式会社貸借対照表
      「資産の部」
      • 流動資産 802百万円
      • 流動資産のうち、現金・預金 530百万円
      • 流動資産のうち、売掛金 242百万円
      • 流動資産のうち、その他 30百万円
      • 固定資産 69百万円
      • 固定資産のうち、有形固定資産 9百万円
      • 固定資産のうち、投資その他の資産等 60百万円
      • 資産合計 871百万円
      「負債の部」
      • 流動負債 216百万円
      • 固定負債 146百万円
      • 負債計 362百万円
      「純資産の部」
      • 資本金 10百万円
      • 利益剰余金 499百万円
      • 純資産合計 509百万円
      • 負債・純資産合計 871百万円
【事業運営に必要な資産の対応】
  • 土地・建物等は、当面は貸付による対応とする。
  • 車両は、当初は貸付からスタートし、内部留保を集積して自己資本に切り替えていくこととする。
  • 停留所は、交通局が所有するものは、現行のバスサービス維持のために必要不可欠かつ他事業への活用や転売が困難であることなどを考慮し、円滑な移行を進めるため、無償譲渡とする。
    • 平成26年3月31日現在の大阪市自動車運送事業財産明細書
      資産の部18,178百万円の内訳は
      • 有形固定資産 18,177百万円
      • 有形固定資産のうち、営業所、バスターミナル等の土地 4,927百万円
      • 有形固定資産のうち、営業所、バスターミナル等の建物 8,301百万円
      • 有形固定資産のうち、電照標識、金属式標識等の構築物 622百万円
      • 有形固定資産のうち、バス車両530両等の車両 3,023百万円
      • 有形固定資産のうち、車庫等の機械設備である機械装置 1,220百万円
      • 有形固定資産のうち、整備関係機器類である工具、機器及び備品等 70百万円
      • 有形固定資産のうち、営業所建物等の建設仮勘定 14百万円
      • 無形固定資産 1百万円
      • 無形固定資産のうち、ソフトウエア 1百万円



(2) 民間からの資本注入
目的と考え方
  • 資本注入の目的
    • 一括譲渡により事業者が複数存在しないなかでは、競争性の発揮によるサービス改善やコスト削減、交通インフラの活性化にリスクがあるため、市場で競争性を発揮している民間事業者から、経営陣だけではなく「資本注入」という具体的な形で最大限経営に参画してもらうことで課題の解決を図っていく。
  • 譲渡時の資金調達
    • 当初は営業所等の土地・建物やバス車両などの資産を取得せず、事業開始に必要な資金は金融機関からの借り入れ等で対応し、内部留保を集積して自己資本に切り替えていくため、増資による資金力強化の必要はない。
  • 増資の目的
    • 増資は資金力を得ることが大きな目的ではなく、第一に資本構成を変えることである。
  • 増資のタイミング
    • 大阪シティバス株式会社に530両規模もの乗合バス事業の経営実績がない中、民間事業者の立場からは、譲渡時点で株主のコンセンサスを得て、資本注入を判断することは難しい面もあることから、着実な経営実績を出したうえで適時に外部資本を注入する。
    • その間に大阪シティバス株式会社も経営理念や方針をよりブラッシュアップし、着実に経営実績を上げながら同社の経営に、より最適なパートナーのあり方を検討する。
  • まとめ
    • 当初は、「市(地下鉄)出資100パーセント」で運営する。
    • 民間事業者の参画意欲が働く経営実績を出したうえで、適時に外部資本の注入(増資)によって資本構成を変更する。
    • 民間事業者からの経営陣や資本の注入により優れた民間ノウハウを取得することで、同社の成長性や発展性をより一層高め、大都市にふさわしく、市民・利用者により利便性の高いバスインフラの提供を目指す。



資本金
  • 4(1)の「資産形成の基本的な考え方」から、譲渡と同時に資本を強化する必要性が低いことも踏まえ、当初は現在の資本金(1,000万円)でスタートする。
  • 将来の民間資本の注入による増資時の資本金は、
    • 企業として、社会的な信用力を保持する観点も考慮する必要がある。
    • 関西民鉄系列のバス会社の資本金をみると、大半は1億円とされている。
    • 一般的に資本金が1億円以下の場合は、税制上のメリットもある。
    このようなことから、増資時の資本金は概ね1億円とする。
<参考>
(ア) 民間バス会社の資本金
  • 西日本ジェイアールバス株式会社:21億1千万円
  • 阪急バス株式会社:6億9千万円
  • 南海バス株式会社:1億円
  • 近鉄バス株式会社:1億円
  • 京阪バス株式会社:1億円
  • 阪神バス株式会社:9千万円
(イ) 税制上のメリット
  • 資本金が1億円以下の場合、法人事業税において外形標準課税が適用されない。
  • 資本金と資本剰余金の合計額が1億円以下の場合、法人市民税の均等割額が少なくなる。
    (1事業所につき、資本金1千万円超15万円、1億円超40万円)

  • まとめ
    • 当初は資本構成を変更せず、資本強化の必要性も低いため、資本金は現在の1,000万円でスタートする。
    • 将来の増資時の資本金は、多くの民間バス会社と同様に概ね1億円に設定する。


(ウ) 増資時の株主構成
  • 議決権保有割合と株主の権利・権限等
    • 議決権保有割合が3パーセント以上(100分の3以上)の場合、総会招集請求権・役員の解任請求権・業務財産検査役選任請求権・会計帳簿閲覧請求権がある。
    • 議決権保有割合が20パーセント以上(5分の1以上)の場合、連結決算上は関連会社となり、出資した会社の損益が連結決算として加算されるため、経営上の責任を果たす目的から、取締役などが派遣されることがある。
    • 議決権保有割合が33パーセント超(3分の1超)の場合、発行済株式総数の過半数を有する株主を定足数とし、出席株主の議決権の3分の2以上の多数によって決められ、定款の変更・解散・合併など、特に重要な事項の決議に行われる株主総会の特別決議を単独で阻止できる。
    • 議決権保有割合が50パーセント超(2分の1超)の場合、発行済株式総数の過半数を有する株主を定足数とし、出席株主の議決権の過半数によって決められ、取締役・監査役の選任や計算書類の承認などの決議事項に行われる株主総会の普通決議を単独で成立させられる。
  • 平成26年9月~10月の交水委員会、決算委員会議会における出資比率の議論
    • 民間事業者の出資率は20パーセント以上と整理されているが、33パーセント以上にして特別決議を単独で阻止できる状態は、出資者には最低でも必要ではないか。
    • 51パーセントと49パーセントでは議決権が全然違う。市民の足を確保し大阪市民のサービスに供する視点は忘れず、資本導入すべき。
    • 地下鉄としっかり一体性を保つ必要があることから、地下鉄を運営する親会社が、相応の株式を保有する必要がある。
  • まとめ
    • 増資時の出資比率は、バスサービス維持に対する市民・利用者の安心・安全への担保、地下鉄とのネットワークの一体性や連携性の維持を勘案し、地下鉄のグループ会社として交通局(もしくは地下鉄新会社)が過半数の株式を保有するものとする。
(エ) パートナー選定
  • 選定の視点
    • 大阪シティバス株式会社の経営理念や方針、また、公共交通事業者としての責務について、将来に亘り共有していただけること。
    • 大阪シティバス株式会社の経営に責任を持って参画していただけること。
    • 経験・知識などの面から優れた人材を、経営陣に派遣していただけること。
    • 長年に亘り、公共交通事業者としての責務を果たされ、健全な経営をされていること。
    • バス会社の場合、一定の事業規模で経営されており、また、貸切や長距離など、幅広く事業展開をされていること。
    • バス経営に関するシナジー効果をより期待する観点から、本市域周辺で運営実績があること。
    • より市民・利用者のサービス向上が期待できるよう、鉄道との連携が期待できること。
      などから、交渉先として、市バスエリアとネットワークを接し、バス会社を系列に持つ鉄道事業者(又は系列のバス会社)が考えられる。
      なお、大阪シティバス株式会社において、経営理念や方針をよりブラッシュアップし、着実に経営実績を上げながら同社の経営に、より最適なパートナーのあり方を検討する。
  • パートナー数
    • 経営責任を明確化するため、1~2社が望ましいと考える。
(オ) 外部資本注入までのフローイメージ
 譲渡後、民間事業者への出資意向の予備調査を実施し、出資意向や条件等の整理など予備調査の集約を行う。
 大阪シティバスが着実な経営実績を上げていく中、民間官事業者への出資の打診・交渉を行い、民間事業者の意向の集約などを経て、1~2社の出資元を決定し、民間事業者及び地下鉄からの増資によって資本金を1億円としていく。なお、増資における地下鉄の出資比率は過半数とする。



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