4 新会社の事業計画・施策

(1) 安全対策
ア 安全対策の推進

 安全は経営形態に関わらず最優先の課題であり、民営化しても安全最優先の姿勢が揺らぐことはない。
 【ハード面の取組み】

  • 津波浸水対策(計画期間:平成26年度~平成30年度)
    • 停電した場合、駅と駅の間に列車が立ち往生することなく、確実に駅まで走行できるよう大容量蓄電池を設置する。
    • 浸水を防止するため、駅出入口をはじめとする地下鉄施設に止水扉などの必要な設備を整備する。
  • 耐震対策(計画期間:平成23年度~平成30年度)
    • 阪神・淡路大震災以降、高架橋脚(約1,000本)、トンネル中柱(約1,500本)、特殊構造物の補強を行ったが、東日本大震災の被災状況などから得られた、新たな知見・耐震設計基準等を踏まえ、高架橋脚(約400本)、トンネル中柱(約1,300本)の補強や、大きな揺れで脱線しても、高架から転落しないような対策に着手している。
  • 延命化対策
    • 地下鉄のコンクリートは建設当時の健全度を保っており、定期的な目視及び打音検査により、傷みを早期に発見している。
    • 現在も必要な予算を十分に確保し、傷みの補修や傷む前にもコンクリートのはく落防止や橋の補強などの対策を実施している。
    • 今後も、さらに長持ちさせるため「転ばぬ先の杖」の精神で、安全に万全を期して先手先手の取組みを進めていく。
 【ソフト面の取組み】
  • 教育訓練
    •  「安全教本」を使用した机上研修、「輸送の生命館」における体験型研修を実施
    • 知識・技能を身に付けるための「総合訓練」や「JRとの合同訓練」等の実地訓練を実施

イ ホーム上の安全対策に関する取組み
 プラットホームからの転落や列車との接触事故を防止することは、鉄道事業者として取り組むべき重要な課題である。新会社においても引き続きホーム上の安全対策に鋭意取り組んでいく。
 可動式ホーム柵、ホーム先端警告表示、非常停止ボタンの増設、転落なくし隊、ホームベンチの向き変更、点字ブロックの更新といった、さまざまな対策を検証するとともに、転落時の行動パターンの分析から危険行動の発見を行う等、効果的な対策の実施に努めていく。


ウ バリアフリーに対する取組み
 バリアフリー施策については、これまで「ひとにやさしい地下鉄」として先進的に取り組んできた。新会社においてもこれまで果たしてきた役割を「経営理念」の根本として継承していく。

(2) 関連事業の推進

  • 事業戦略
    • 地域・沿線とともに発展する「生活・まちづくり企業」への進化
    • 多様な事業展開による新たな雇用の創出
    • 鉄道事業の持続・発展につながる企業ブランドの確立
  • 事業目標
    民営化後、速やかに事業化を進め、多様な事業展開により、新たな収益の確保を目指します。
    • 民営化後10年で、関連事業比率15パーセント(平成26年度決算時 5.9パーセント)
     【さらに便利で快適な駅空間へ】
    • 駅ナカ事業の拡大(「エキモ天王寺・なんば・梅田」 に続き、新大阪など順次オープン)など
     【沿線地域での新たな事業展開】
    • 保有不動産を有効に活用した、賃貸マンション事業、高齢者支援事業、子育て支援事業、健康関連事業などのビジネス展開など
     【発信力を高めた広域的な事業展開】
    • 増加するインバウンド需要にも対応し、観光事業とも連携したホテル事業
    多様な分野の事業展開により、社会構造の変化にも柔軟に対応し、信頼され愛されるブランドを確立してまいります。


(3) 地下街との一体的な地下のまちづくり

  • 平成27年6月1日に、建設局から交通局へ、大阪地下街株式会社株式の有償所管換えを実施し、交通局のグループ企業となった。
  • 地下街の安全性の向上と、より一層のにぎわいの創出を図る「地下街大規模リニューアル」の実行
  • 地下の防災面の強化や、「大阪の地下をグランド・リニューアルする」という交通局民営化後の事業戦略にもつながり、地下空間のさらなる安全・安心、地下のまちづくり、地域経済の活性化にも寄与できる。


(4) 未着手の地下鉄条例路線の整備のあり方

  • 未着手の地下鉄条例路線が、国の次期答申に盛り込まれるよう、これまでと同様行政とも連携しながら取り組んでいく
  • 大阪市鉄道ネットワーク審議会からの答申を踏まえ、本市としての考え方を新会社は最大限に尊重していく


(5) 新会社の収支計画
ア 収支見通し
 乗車人員の減少傾向による運輸収入の減少や民営化による租税公課の負担増を見込んでも、人件費の削減や支払利息の減少などにより黒字を確保。

  • 民営化1年目では、営業損益299億円、経常損益221億円
  • 民営化2年目では、営業損益290億円、経常損益214億円
  • 民営化3年目では、営業損益300億円、経常損益231億円
  • 民営化4年目では、営業損益309億円、経常損益243億円
  • 民営化5年目では、営業損益336億円、経常損益274億円

イ 他事業者との比較
 経常利益率や有利子負債/EBITDA倍率の比較においても、他の民間鉄道事業者と比較しても遜色のない経営成績が見込まれる。
  • 経常利益率の比較(各社の率は平成26年度決算の有価証券報告書をもとに作成)
     民営化1年目14.1パーセント、民営化5年目17.6パーセント、阪急18.4パーセント、阪神19.7パーセント、京阪17.6パーセント、近鉄10.7パーセント、南海13.5パーセント、5私鉄平均14.8パーセント、東京メトロ23.2パーセント
  • 有利子負債/EBITDA倍率の比較(各社の率は平成26年度決算の有価証券報告書をもとに作成)
     民営化1年目5.9倍、民営化5年目4.1倍、阪急8.7倍、阪神5.2倍、京阪10.0倍、近鉄26.8倍、南海13.0倍、5私鉄平均14.8倍、東京メトロ3.9倍

ウ 安全に関する投資計画
 地下鉄の安全運行のために必要なさまざまな設備や施設を保有しているが、これまでも各種設備・施設がその機能を常に維持するために、計画的に投資を行ってきた。
 民営化後も、安全関連の投資については、平成29年度からの5年間で約 1,100億円の計画を立てており、運転保安設備をはじめとする安全関連設備の維持管理や更新に努めるとともに、地下構造物の予防保全による延命化、高架橋やトンネルのさらなる耐震性の向上などに取り組んでいく。さらに、車両や施設等の修繕に年平均約80億円を充てることとあわせて、輸送の安全の確保を達成していく。
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