4 運輸振興への随意譲渡の考え方

各営業所の経営環境や立地環境を考慮して、4つのスキームと議会で議論があった2つのスキームについて整理しました。

  • ケース1
    • スキーム
      競争性が働く環境を重視したスキーム
      運輸振興が不測の事態に備える役割を果たしつつ、民間バス事業者による競争性を最大限発揮させ、コスト削減・サービス向上を図る
    • 運輸振興への譲渡営業所
      不測の事態に備え、事業性のある路線の経営環境が比較的良く、立地環境が最も優れる中津営業所を選定
    • 営業損益
      事業性のある路線 83百万円の黒字
      地域サービス系路線 109百万円の赤字
    • 競争性
      公募による競争性が最大限発揮できる
    • 補助金
      事業者間の競争により補助金の圧縮が最大限期待できる
    • サービスアップの観点
      民間バス事業者のノウハウによりサービスアップが期待できる
    • 民間バス撤退時に対応する運輸振興の機能の観点
      運輸振興の機能は果たせるがケース2・3に比べ事業規模が小さいため、対応能力も小さい
    • 交通政策の共有
      民間バス事業者と交通政策を共有し、路線・サービスの維持向上を図るが、ケース2・3に比べて事業者数が多くなる可能性が高く、共有化に時間等が必要
    • 職員関係
      転籍先が最大7カ所になる
    • 運輸振興のあり方
      運輸振興が市場競争原理のもと経営改革を実現することを前提とし、公募により結果として一括譲渡を受けることもある
    • スケジュール
      議決後、公募手続き等の移行期間に10カ月を要する(民営化の実施時期は、平成26年4月からずれ込む)
    • その他の課題等
      譲渡先事業者は、現行サービスを継続するためスルッとKANSAIの加入条件を満たす必要がある


  • ケース2
    • スキーム
      民間撤退時の対応能力を重視したスキーム
      運輸振興が不測の事態に備える役割を踏まえ、安定的な経営基盤を確保する
    • 運輸振興への譲渡営業所
      不測の事態に備え、十分な経営環境があり、立地環境もバランスがとれた守口営業所・中津営業所・鶴町営業所の3営業所を選定
    • 営業損益
      事業性のある路線 554百万円の黒字
      地域サービス系路線 350百万円の赤字
    • 競争性
      公募による競争性が発揮できる
    • 補助金
      事業者間の競争により補助金の圧縮が期待できる
    • サービスアップの観点
      競争の規模が小さくなり民間バス事業者によるサービスアップが限定的となる可能性がある
    • 民間バス撤退時に対応する運輸振興の機能の観点
      対応に必要な経営基盤と事業規模を兼ね備えている
    • 交通政策の共有
      ケース1に比べ、運輸振興への譲渡営業所数が多いため共有化がしやすい
    • 職員関係
      転籍先が最大5カ所になる
    • 運輸振興のあり方
      運輸振興が市場競争原理のもと経営改革を実現することを前提とし、公募により結果として一括譲渡を受けることもある
    • スケジュール
      議決後、公募手続き等の移行期間に10カ月を要する(民営化の実施時期は、平成26年4月からずれ込む)
    • その他の課題等
      譲渡先事業者は、現行サービスを継続するためスルッとKANSAIの加入条件を満たす必要がある


  • ケース3
    • スキーム
      円滑な移行と民間撤退時の対応能力を勘案したスキーム
      より円滑な移行を考慮し、現在のオペレーション実績を踏まえ、あわせて一定の経営基盤も確保する
    • 運輸振興への譲渡営業所
      管理委託の酉島営業所・鶴町営業所・住之江営業所の3営業所に加え、経営環境が最良で、3営業所を除く残り4営業所間の不測の事態に備え立地環境が最も良い守口営業所を選定
    • 営業損益
      事業性のある路線 336百万円の黒字
      地域サービス系路線 496百万円の赤字
    • 競争性
      公募による競争性が発揮できる
    • 補助金
      事業者間の競争により補助金の圧縮が期待できる
    • サービスアップの観点
      ケース2に比べ、さらに競争の規模が小さくなり民間バス事業者によるサービスアップが限定的となる可能性がある
    • 民間バス撤退時に対応する運輸振興の機能の観点
      一定の事業規模があるがケース2に比べると経営基盤が若干弱くなる
    • 交通政策の共有
      ケース1・2に比べ、運輸振興が2分の1以上を占め、共有化がよりしやすい
    • 職員関係
      転籍先が最大4カ所になる
    • 運輸振興のあり方
      運輸振興が市場競争原理のもと経営改革を実現することを前提とし、公募により結果として一括譲渡を受けることもある
    • スケジュール
      議決後、公募手続き等の移行期間に10カ月を要する(民営化の実施時期は、平成26年4月からずれ込む)
    • その他の課題等
      譲渡先事業者は、現行サービスを継続するためスルッとKANSAIの加入条件を満たす必要がある
  • ケース4
  • スキーム
  競争性を意識しつつ安心を担保したスキーム
  市出資会社を新たに設立し、分割譲渡する
  • 運輸振興への譲渡営業所
  市域を分割し、近隣エリアの営業所単位で分割 
  北部は、守口営業所・中津営業所・酉島営業所・井高野営業所
  南部は、鶴町営業所・住吉営業所・住之江営業所
  • 営業損益
  【北部】
    事業性のある路線 281百万円の黒字
    地域サービス系路線 590百万円の赤字
  【南部】
    事業性のある路線 37百万円の黒字
    地域サービス系路線 236百万円の赤字
  • 競争性
  一定の競争性が期待できる
  • 補助金
  出資会社同士の競争となるが、一定の補助金圧縮が期待できる
  • サービスアップの観点
  出資会社同士の競争となるが、一定のサービスアップが期待できる
  • 民間バス撤退時に対応する運輸振興の機能の観点
  基本的に不測の事態は発生しない
  • 交通政策の共有
  市の出資会社が運営するため交通政策部門との一層の連携が期待できる
  • 職員関係
  転籍先が2カ所になる
  • 運輸振興のあり方
  経営改革の実現が前提
  • スケジュール
  新会社設立にはその準備期間が別途必要
  • その他の課題等
    経営陣へは公務員、公務員OBは原則除外
    人材の確保
    各社の経営能力保持が前提
     一般管理部門のロス
    各社の収支状況等がアンバランスになる


  • 議会で議論があった一括譲渡のスキーム
  • スキーム
  議会での議論を踏まえ、経営能力強化の実現を前提に一括譲渡する
  • 運輸振興への譲渡営業所
  守口営業所・中津営業所・酉島営業所・井高野営業所・鶴町営業所・住吉営業所
  ・住之江営業所の全7営業所
  • 営業損益
  事業性のある路線 318百万円の黒字
  地域サービス系路線 825百万円の赤字
  • 競争性
  公募による競争性は働かない
  • 補助金
  補助金を民間コストに基づき査定すれば適正性は確保できる
  • サービスアップの観点
  競争性が働かないためサービスアップが限定的となる可能性がある
  • 民間バス撤退時に対応する運輸振興の機能の観点
  基本的に不測の事態は発生しない
  • 交通政策の共有
  交通局の出資会社が運営するため交通政策部門との一層の連携が期待できる 
  • 職員関係
  他案に比べ転籍が比較的円滑に進められる
  • 運輸振興のあり方
  経営改革の実現が前提
  • スケジュール
  公募が不要で準備期間の短縮が図れる
  • その他の課題等
  経営陣へは公務員、公務員OBは原則除外


  • 議会で議論があった段階的譲渡のスキーム
  • スキーム
   市民・利用者の安心を担保するため、運輸振興等に委託している4営業所をそのまま
   譲渡、残る営業所の内2分の1を管理委託、1年間状況を見て翌年に委託先に譲渡し
   段階的に民営化を進める
  • 運輸振興への譲渡営業所
   鶴町営業所・酉島営業所・住之江営業所の現在、運輸振興に管理委託している営業所
  • 営業損益
   事業性のある路線 14百万円の黒字
   地域サービス系路線 286百万円の赤字
  • 競争性
   公募による競争性が発揮できる
  • 補助金
   民営化の完了まで期間を要し、公営企業ベースでの助成が必要となるため財政効
   果が低下する
  • サービスアップの観点
   競争の規模が小さくなり民間バス事業者によるサービスアップが限定的となる可
   能性がある 
  • 民間バス撤退時に対応する運輸振興の機能の観点
   一定の事業規模があるが、経営基盤が脆弱である
  • 交通政策の共有
   民間バス事業者と交通政策の共有を図るが、運輸振興の譲渡規模はケース3より低い
  • 職員関係
   職員の段階的転籍が必要
  • 運輸振興のあり方
   経営改革の実現が前提
  • スケジュール
   全路線の民営化が完了するまで期間が必要
  • その他の課題等
   条例の廃止を待たず民間譲渡を進めるという手続き上の問題で民営化を進めること
   が良いのか課題となる

運輸振興への随意譲渡の考え方(まとめ)
  • ケース1
  • スキーム
   競争性が働く環境を重視
  • 営業所
   中津営業所
  • 評価
   公募による競争性が最大限発揮でき、補助金の圧縮効果も大きく期待できるもの
   の、運輸振興の事業規模が小さいため、民間撤退時の対応能力と安定的な経営基        盤の確保に課題がある。

  • ケース2
  • スキーム
   民間撤退時の対応能力を重視
  • 営業所
   守口営業所 中津営業所 鶴町営業所
  • 評価
   運輸振興の安定的な経営基盤を確保し民間撤退時の対応能力を担保しつつ、公募 
   による競争性の発揮により補助金の圧縮効果も期待できるが、一定の規模を運輸
   振興に譲渡するため競争性の発揮はケース1と比べて低くなる。 

  • ケース3
  • スキーム 
   円滑な移行と民間撤退時の対応能力を勘案
  • 営業所
   酉島営業所 鶴町営業所 住之江営業所 守口営業所
  • 評価
   現行委託営業所を中心とした譲渡による円滑な移行と一定の経営基盤を確保する
   ことにより、民間撤退時の対応能力も勘案しつつ、公募による競争性の発揮によ          り補助金の圧縮効果も期待できるが、ケース2と比べると経営基盤が若干弱くなる。

  • ケース4
  • スキーム
   競争性を意識しつつ安心を担保
  • 営業所 
   (北部) 守口営業所 中津営業所 酉島営業所 井高野営業所
   (南部) 鶴町営業所 住吉営業所 住之江営業所
  • 評価
   市出資会社となるため、路線・サービスの維持が確実となり、また、市出資会社の競争
   となるが、一定の補助金圧縮効果が期待できる。なお、新たに設立する市出資会社の人
   材確保に課題がある。

  • 議会での議論
  • スキーム
   一括譲渡
  • 営業所
   守口営業所 中津営業所 酉島営業所 井高野営業所 鶴町営業所 住吉営業所 
   住之江営業所
  • 評価
   公募による競争性は働かないが、路線・サービスの維持が確実となる。
  • スキーム
   段階的譲渡
  • 営業所
   鶴町営業所 酉島営業所 住之江営業所
  • 評価
   市民・利用者の安心を担保しやすいが、全路線の民営化完了まで期間を要し、また財政
   効果や職員の段階的な転籍が必要といった課題がある。 

  • まとめ
   いずれのケースにおいても、それぞれの長所があり譲渡スキームを構築していくことは可能と
   考えられるが、民間撤退時の対応能力を備えるため一定の事業規模を担保しつつ、最も安定的
   な経営基盤が確保できるケース2を基本に、随意で運輸振興に譲渡する営業所を検討してい
   く。


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