3.民営化を目指したこれまでの取組み

(1) 中期経営計画(平成24年度~27年度)の策定
  民営化に向けた基本的な方針を明確にしていく過程においても、両事業の経営改善等は重要であることから、交通局に「経営」の意識を取り入れ、民間手法で「経営目標」・「数値目標」を掲げた中期経営計画を平成24年7月に策定し、取り組んできた。
  • 地下鉄
【目的】
  今後の少子高齢化など様々な外部環境の変化が予想される中で、地下鉄事業の成長戦略を実現させるため、「市民」や「お客さま」など各ステークホルダーにメリットを感じていただけるようサービス改善などに努めるとともに、民営化を見据えて安定的な利益を確保できるようさらなる経営の健全化に取り組む。

【肝となる取組み】
  • 関西屈指の鉄道事業者を目指して、平成27年度には経常利益率15パーセント(225億円)以上の利益確保を目指す
  • 民営化を前提として、健全化を推進することとし、約800人相当のコスト縮減効果を目指す
  • 「お客さま視点によるサービスの改善」として、料金値下げ、清潔感のある快適なトイレへの改善、終発延長等に取り組む


【成果】
 平成26年度までの3年間で初乗り運賃の値下げをはじめとする民営化を目指したサービス改革に取り組むとともに、経営基盤の強化を図った結果、平成26年度決算(速報値)において348億円の経常利益(経常利益率:22.6パーセント)を確保。(会計制度見直し後のベース) 

  • バス
【目的】 
   キャッシュフローを枯渇させることなく確保し、持続可能な安定したバスサービスを提供していくことが喫緊の課題であることから、資金不足を生じさせない自立した経営基盤を確保する。 

【肝となる取組み】
  • 安定的なキャッシュフローを確保し、平成25年度以降、現金資金を枯渇させない
  • そのため、人件費の削減や車両更新計画の見直し等による投資の見直し、路線・事業規模の見直し状況を踏まえた、営業所の統廃合など抜本的な運営コストの削減に取り組む

【成果】
人件費を平成24年、25年の2ヵ年で平成23年度比、計73億円削減するなどし、平成25年度に資金不足を解消した。
(資金不足比率 平成23年度:6.7パーセント、平成24年度:5.2パーセント)



(2) 地下鉄事業
民営化を目指したサービス改革
(ア) 運賃値下げ
 民営化を前提とした効率化によりその原資を生み出すとともに、お客さまの支持を得て増客に繋げていくという民間感覚の取組みのステータスシンボルとして、平成26年4月から初乗り運賃の値下げに取り組んだ。 

【平成26年4月】
  • 消費税増税後でも初乗り運賃を20円値下げ(200円→180円)
    ※ピタパの割引サービスと合わせてご利用いただくと「162円」に。
    (例)平成26年4月改定時:淀屋橋~なんば間(1区)

    改定前:200円 → 値下げ後:180円 → ピタパ割引:162円
    ※ピタパの割引率は10パーセントと想定


【平成27年9月~平成28年6月】
  • ICカード導入10周年である平成28年2月を中心に、10ヵ月限定でピタパの割引率を10ポイントアップする
    「ピタパトリプル10キャンペーン」を実施予定。


【平成29年4月】予定されている消費税改定時 
  • 地下鉄事業の経営の観点も踏まえながら、現行2区運賃(240円)の値下げを目指す。
(イ) 終発延長
  実施に伴うコスト増がネックとなっていたが、業務体制の見直しなどコスト縮減によりこれをクリアし、お客さまの要望に応えるとともに、大阪市の都市機能の向上によって大阪経済の活性化に貢献できると判断して取り組んだ。

【平成25年3月】
  • 終発時間が民間鉄道事業者に比べて30分~40分程度早かったところ、終発後に運行している回送列車の営業化等により、最大30分延長を実現。

    堺筋線を除く、全路線で終発時間を延長
【平成25年12月】
  • 相互直通している事業者とダイヤ調整を行ったうえで終発延長を実現。

    堺筋線における終発時間を延長

    全路線で終発延長を達成
(ウ) トイレのリニューアル
 民営化を目指している地下鉄として、新しくこれまでにない発想で、お客さまに劇的なサービスアップを実感していただくために、従来のイメージを刷新するリニューアルをスピード感を持って取り組んだ。
  • 暗い、汚い、臭いという駅トイレのマイナスイメージを払拭し、明るく清潔感あふれる快適なトイレに、4ヵ年計画で順次リニューアル。
    • 平成24年度 23駅完了 
    • 平成25年度 17駅完了(累計40駅)
    • 平成26年度 21駅完了(累計61駅) 
    • 平成27年度 51駅目標(累計112駅)


(エ) 売店のリニューアル、駅ナカ事業の展開
   交通局の外郭団体に一括して任せていた駅売店について、競争原理を導入し、民間コンビニ等を誘致するとともに、駅ナカについても民間活力を活用した。

  • 売店:平成24年度にリニューアルを実施し、コンビニエンスストアの運営ノウハウを活かしたより質の高いサービスを提供。 
    • 北エリア:ポプラ
    • 南エリア:ファミリーマート
  • 駅ナカ:駅ナカ事業の展開により、お客さまの利便性向上とともに、駅構内を明るく快適な空間に。 
    • エキモ天王寺 平成25年4月オープン
    • エキモなんば 平成25年10月オープン
    • エキモ梅田 平成26年4月オープン

デューデリジェンス業務
地下鉄事業を株式会社化するにあたっては、会社法にもとづく設立手続きが必要であり、現在保有している資産等について、民間会計基準での資産の内容・数量とその価額を確定する必要がある。
このため、現在保有している資産等(トンネル・駅舎・車両等の固定資産、現金・預金等の流動資産など)について、実在性の確認や数量、価額の確定などを行うことを目的に平成25年度からデューデリジェンスを実施している。

【平成25年度~26年度業務の結果】
  • 平成25年度末時点における民間企業会計基準での固定資産台帳をもとに、平成26年度中の資産の増減等を推計し、平成27年4月1日に現物出資を行うと仮定して現物出資財産額の試算を行ったところ、正味資産は3,713億円となった。

【今年度業務の予定】
  • 民営化の条例案の議決を見据えつつ、平成25年度決算以降の資産の増減についての時点修正を行い、議決を得られた後には、民営化直前に実施すべき流動性のある資産や建設仮勘定の調査、地下鉄事業に直接供していない資産について正式鑑定を行い、民営化時の出資額を確定させるとともに、会社設立等の準備を進めていく。


関係省庁との協議
民営化に際しての企業債や補助金の取扱い、また国の成長戦略の一環として事業再編の円滑化を図ることを目的として制定された「産業競争力強化法」の適用について、国や関係先と協議を進めてきた。

(ア) 企業債の取扱い
  • 平成26年度末で5,292億円の企業債残高。
  • これまで国や借入先との協議を継続してきたことから、公営企業を廃止した時は、繰上償還を行うことが可能となっている。(この場合は補償金の支払いは不要)
  • 繰上償還の対象となる企業債については、金融機関からの資金調達や社債発行など様々な資金調達方法で資金調達を行い繰上償還を実施することとし、国や関係先と協議を進めている。
(イ) 補助金の取扱い
  • これまで公営企業として、地下鉄整備やエレベーター設置といった施設改良などの財源について、国や一般会計等から多額の補助金を受けている。
  • これらの補助金については、「民営化したとしても、他の用途に使用したとは言えないので、補助金等の返還は不要」との見解を得ている。
(ウ) 産業競争力強化法の適用
  • 産業競争力強化法とは、力強い経済を取り戻すため閣議決定された「日本再興戦略」を実行するために、平成25年12月に成立した法律。
  • 地下鉄事業の民営化の目的は、大阪経済の活性化・成長戦略に貢献するものであり、「産業競争力の強化」といった同法の立法趣旨に沿うものである。
  • 民営化に際して、同法の適用について、関係省庁との協議を進めている。

【法適用のメリット】
  • 税制優遇措置:登録免許税の軽減(約15億円)
  • 会社法上の手続きの簡素化:新株発行時の現物出資について、検査役の財産価額調査が不要

    より円滑・ローコストに民営化が進められる(税制優遇措置の適用にかかる計画認定期限:平成28年3月31日まで)



(3) バス事業 
バス路線の再構築
   バス事業の民営化を見据え、バス事業者としての経営努力を前提として独立採算を目指す「事業性のある路線」と、採算性の確保が困難であるが市が支援を行いながら維持する「地域サービス系路線」に分類し、鉄道と合わせて市内をほぼ公共交通ネットワーク網でカバーできるよう、平成26年4月1日に路線の再構築を行った。 

  • 譲渡する路線(平成27年8月1現在) 
    • 事業性のある路線:58系統
    • 地域サービス系路線:29系統
    • 合計:87系統
    • 走行キロ(1日平均):46,924キロメートル
    • 営業キロ:443.5キロメートル
    • 停留所数:986ヵ所
  • 使用する主な施設
    • 営業所:7営業所
      (直営:住吉、守口、中津 大阪シティバス株式会社へ管理委託:住之江、鶴町、酉島 南海バス株式会社へ管理委託:井高野)
      ※管理委託:道路運送法第35条の規定に基づき、お客さまに対する運送責任、路線設定に伴う営業権、車両、収入等は交通局に帰属させたまま、運転、運行管理、整備管理業務を一体として他の乗合バス事業者に委託するもの。
    • バスターミナル:6ヵ所(大阪駅前、北巽、住之江、出戸、なんば、野田阪神) 
    • 操車場:3ヵ所(阿倍野北、天保山、西船町)
    • 転回地:10ヵ所(阿倍野東、杭全、榎木橋、中島公園 ほか)
  • 使用するバス車両(全車両ノンステップバス)
    • 住吉:83両
    • 守口:82両
    • 中津:77両
    • 住之江:73両
    • 井高野:49両
    • 鶴町:85両
    • 酉島:81両
    • 合計:530両
大阪シティバス株式会社の経営計画
  • バス事業の管理委託先である大阪シティバス株式会社においては、これまでも経営体制の強化に取り組んできた。
    →様々な経営改善等の取組みにより、平成25年度は約3,000万円の赤字であった経常損益が、平成26年度では約2,200万円の黒字となった。
  • 平成26年11月に策定の「バス事業民営化推進プラン(案)」において、同社の一層の経営基盤の強化を前提に、一括してバス事業を譲渡するスキームとし、地下鉄会社が100パーセント出資するグループ会社として運営をスタートすることとしている。 

【平成25年度】
  • 民間事業者からの取締役の招へいや、交通局職員を受入するなどし、経営・労務・運輸部門の体制を強化 

【平成26年度】
  • 市バス事業譲受後の経営計画を策定するため、市バス民営化準備室を設置
  • 乗務実績を成果とする自動車運転手の賃金労働条件の見直し
  • 年功序列から能力や成果を軸にした管理部門の人事給与制度の見直し(成果主義の導入)
  • 新規事業による収益事業の強化
    • 送迎バスなど貸切事業の実施に向け、貸切免許許可申請中
  • 新たな路線開拓による収益事業の強化
    • USJ行バスの延伸(堺駅西口~住之江公園~USJ)
    • イケア鶴浜便の新設(ドーム前千代崎~大正橋~イケア鶴浜)

【平成27年度】
  • 「大阪シティバス創業プロジェクトチーム」を発足(平成27年4月)
    • 大阪シティバス株式会社が、路線継承後も持続的・安定的に市民・利用者に必要なサービスを提供するには、健全な経営基盤の確保が必須条件であり、より良いサービス提供を目指す会社としての成長戦略も必要となる。そのため、これまで以上に具体的な準備作業を推進するため、交通局長等を責任者とし、当局と大阪シティバスのメンバーによるプロジェクトチームを編成した。



(4) 経営収支、乗車人員の推移 
地下鉄事業
【経営成績について】
  • 平成26年度は、経常損益において過去最大の黒字を確保
  • この間、局独自の給与カットに取り組んだこともあり、3年間で約93億円の収支改善を達成
  • 補助金の縮減(41億円)を加味した実質改善額は約134億円となる

【乗車人員について】
  • 3年間で1日約96,000人、年間約3,500万人の増加
  • しかしながら、平成26年度の運輸収益は初乗り運賃値下げの影響もあり、平成25年度比で16億円の減少となっていることから、引き続き、更なる増収対策を図っていく 


バス事業
【経営成績について】
  • 31年ぶりに経常黒字であった平成25年度に引き続き、平成26年度も経常黒字を確保
  • この間、事業規模の見直しや局独自の給与カット、投資の抑制等に取り組んだこともあり、3年間で約34億円の収支改善を達成
  • 補助金の縮減(15億円)、地下鉄会計からの繰入金の削減(30億円)を加味した実質改善額は約79億円となる

    【今後の状況について】
  • オスカードリームの和解金処理のため平成26年度決算で健全化団体となる見込みであり、平成27年度中に、経営健全化計画を議会の議決を経て国へ提出する必要がある




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